COLUMN
No.22
先日、知合いから紹介されお会いした、若いご夫婦のAさん。古い建物をリフォームして新居にしたいとのご要望があって、設計と施工を、という依頼ではあったのだけれど、どうしても予算的な面でご要望にお応えできなくて、他社でご検討されていると思う。
そのAさん夫婦と数回お会いしたのだけれど、その会話の中でお互いに共感したところがあった。
Aさんご夫婦は、ご両親がまだ健在で焼肉店を営まれている2代目の若夫婦で、今では2代そろってその焼肉店を切盛りしてみえる。店のある中村区では、結構有名でおいしいとの評判の店らしい。
だけど、最近では焼肉屋さんでも安いチェーン店も多く、地元の古くからの常連さんは結構いるのだけれど、新規のお客さんを取り込んでいくのが今後の課題らしい。話を聞くと、そのお店では、美味しくない脂部分は相当な手間をかけて手作業で取り除いているそうで、その分、チェーン店のようには安い単価にはできないらしい。安いチェーン店の前に並んでいるお客さんを見ると、「うちの肉のほうが絶対美味しいのに」と思うそうだ。相当な手間をかけている割には、良心的な金額にしているし、一度食べてみると必ず美味しいはずだと。そして、親父さんは常連さんなんかには、エイっと安い金額でサービスしてしまうことも多いとか。
だから儲からない、と。
私も工務店の2代目の三男坊で、業種はまったく違うけれど、似たような境遇だなあと。住宅の場合、ハウスメーカーは展示場やら広告やらでどんどんと新規のお客さんを獲得し、バンバン建てて勢いはすごい。儲けているところはドンドンと儲ける。
ハウスメーカーというもの自体は全然否定しないし、それはそれでいいと思う。売れているということは、ある意味、世間から支持されているということだ。
ただ、月に何本契約を取るかが大切な営業マンや、一度もお施主さんに会わない社内設計マン、一人で十数件も受け持って1週間に1回も現場に行けないし、実は全然建築を知らない現場監督に建ててもらった住宅に数千万円を払うんだったら、最初の打合せから、設計、そして施工管理までを自分たちで行い、思い入れは負けないし、「うちで建てたほうが絶対いいのに」って勝手に思うだけ。金額だけを見て、高いのがいいのか、安いのがいいのか、と聞かれれば多くの人は、安いのがいい、と答えると思う。だけど、その金額の裏側にはいろんな手間や思いがあることを知れば、それを理解してくれる人もいる。
私の中学時代の同級生がAさんと同じく家族で焼肉屋をやっている。実家がそもそも町の肉屋で、その斜向いに店を構え、その同級生が店長で、夜はお母さんとお兄さんとお姉さんが手伝っている。金額はチェーン店のような安さはないが、マジでうまい。友人、知人にも自信を持ってお奨めしているし、連れていった友人でうまいと言わなかったヤツはいない。と思う。金額だけを見れば安くはないけど、たぶん、「町の肉屋が、ご近所さんにまずい肉なんか出せない」という思いでやってるんだと勝手に理解しているのだけれど、そう思うと、そのうまさでその値段は逆にお値打ちだと思う。
金額で勝てなくても、その裏側を理解していただくことができれば支持される、と少なくとも私は思う。だから、同級生の焼肉屋にしか行かないと決めていたけど、いつかAさんの店にも行ってみようと思う。
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