COLUMN

No.37
意識の高いひと 2005/08/08

 先日完成した春日井市T邸の外部デッキを、その後、大工さんに作ってもらっていたのだけど、その大工さんとははじめての面識で、いろいろと話をしていたら、まだ30代だと思うけれど変わった経歴の持ち主だった。

  そもそも、工業高校の建築科を出ていて、卒業と同時に大工の修行をしだしたそうだ。木造系の大工さんのもとで修行した後、プレハブ系の仕事を覚えたくてその系統の仕事をこなし、また、RC造の大工仕事を覚えたくてマンション系の仕事をこなしてきたそうだ。木造、鉄骨造、RC造それぞれの大工仕事を一通りこなせるようになると、今度は、コストのこともわからないといけないと言う事で、住宅からマンションまでこなす名古屋の中堅ゼネコンに現場監督として数年勤めたそうだ。その後はひとり独立して、また大工をしながら、ゼネコン時代に知り合った各業者さんを手配したりして「ひとり工務店」もしているそうだ。

 その大工さんは、結構意識の高い大工さんで、きちんと、丁寧に、ひとつひとつの仕事を完成させていきたいと話していた。
だから、自分が携わった仕事で、他の業者さんがテキトーに仕事をされると腹が立つし、自分が請負った住宅なんかでは、確かな腕を持った職人しか入れないとも。

  現場に入ってくる職人もほんとにピンからキリまでいる。 最終的な仕上がりまで考えて、お施主さんの使い勝手までも考えて仕事をしてくれる、意識の高い職人もいれば、残念ながら、言われたことだけしかできない(言われたことすらできない)職人もいる。場を預かるものとしては、前者のような職人さんと一緒に仕事をしたいのだが、そういう「デキる」職人は引っ張りダコなことも多く、仕事を依頼しようとしてもなかなか都合がつかないことも多い。

 職人に限らず、仕事に対する意識の高い人は、自分の仕事に対する向上心もプライドも高く、当然のことながら、仕事に対する報酬は安くない。でも、そのような意識も向上心もプライドも高いひとへの支払いは、『コスト』ではなく『必要な対価』だと思う。

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